さて,生活保護受給者の方が相続人の場合について考えてみます。
 相続の場合,まず確認しなければならないのが,遺言があるかどうかです。そして,遺言がある場合,どういう遺言なのかを確認します。普通目にする遺言としては,被相続人が自分で作成した自筆証書遺言(民法968条)か公証人役場で作成した公正証書遺言(民法969条)のどちらかでしょう。
 公正証書遺言の場合は,公証人というプロが作成をしているため,問題は少ないのですが,自筆証書遺言の場合は,注意が必要です。そもそも自筆証書遺言の場合は,遺言を発見したら,家庭裁判所に検認という手続きをとらなければなりません(民法1004条1項)。遺言が封をされているときは,開封せずに裁判所の手続きを待ちます(同2項)。また,遺言は,要式行為と呼ばれ,全部自筆である必要があること,年月日の記載,署名押印があることなど,厳格な要件が定められており(民法968条),これに反すると無効となりますので,その確認も必要です。
 さて,遺言が有効に存在するとなると,遺言にしたがって生活保護の方が相続するかを確認することになります。遺言上,生活保護の方にまったく相続する分がないとしても,生活保護の方が被相続人の配偶者や子,親であるときは,一定の割合を確保できる権利である遺留分があります(民法1028条)ので,普通生活保護は世帯ごとに受給され実際には例は少ないかもしれませんが,注意が必要です。ただし,遺留分権は,相続を知ってから1年以内に行使しないと,時効となってしまいます(民法1024条)。(つづく)

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