①~④は,生活保護の方が相続人になった場合について考えてみましたが,ここからは,生活保護の方が亡くなった場合の相続関係を考えてみたいと思います。ただし,話を複雑にしないために,寄与分や特別受益については考慮しないでおきます。

 生活保護の方であろうがなかろうが,亡くなった時に,まずチェックしなければいけないのが,遺言書があるかどうかです。
 そして,遺言書がある場合には,法定相続人の中で遺留分権利者がいるかどうかをチェックしなければいけません。遺留分権利者は,配偶者と子,子がいないときは親です(民法1028条)。親だけが法定相続人のときは,相続財産の3分の1,その他のときは,相続財産の2分の1が遺留分になります。兄弟には遺留分はありません。
 遺留分権利者がいるときは,遺留分権利者が被廃除者(民法892,893条)や欠格者(民法891条)でなければ,遺留分減殺請求の可能性があります(民法1031条)。減殺請求されると,遺留分を侵害している範囲で遺言は効力を失ってしまいます。ただし,遺留分減殺請求権は,相続開始および遺留分が侵害されていることを知ってから1年以内または相続開始から10年以内に行使しなければならないので,普通は,遺言書を法定相続人らが知れば,1年で確定します。
 もちろん遺留分権利者が被廃除者や欠格者なら,遺留分を主張できませんので,遺言書通りとなります。
 もっとも,生活保護の方は,財産を持たない方がほとんどでしょうから,遺言をするということも,財産的な面では意味が小さく,あまりないことです。こうした遺言書がない場合は,法定相続人がいれば,法定相続分に応じて相続が生じます。
 法定相続人がいないとか,全員が相続放棄してしまった場合は,財産があるのであれば,原則として相続財産管理人を選任することになります(952条)。(つづく)

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